終演のご挨拶

モルディブの星、月、終演しました。皆さまありがとうございました。
大切な90分を私たちの舞台にくださってありがとうございました。
全てのお客様に感謝をお伝えします。ありがとうございました。

終演後に何を書くかずっと考えてまして、裏話のようなことをすることでお客様の印象を壊してしまうのかなとか、不安に思っていたのですが、やはり思いが溢れて止まらないので悔いの残らないように書かせていただきます。

樋口大悟さん
彼の演じた吉行は、自分の気持ちをほとんど語らないんですね。ほとんどが何気ない会話。そんな吉行の気持ちが少しずつ変わり、布美とともにモルディブへ行く説得力を生み出すのが難しくて、大悟と何度も話しました。
大悟も説得力をすごく大事にする役者なので、吉行という男の背景、ベースを深く掘ってくれました。
宇都宮に行って、実際にバーで飲んで来たりとか。ここまでやるか、と思わせてくれました。
最終的にこんな人いそうだなと思わせてくれたのは大悟の人間としての厚みだと思います。
稽古中も愚痴一つ言わず、全てこちらの演出を受け入れてくれました。言葉にはしないけど背中で空気を作る人だなと思いました。座組の皆のことを誰よりも考え、自分よりも周りを考える、強い男だなと。一貫して自分より人のことを考えていて、「福ちゃんとイボンヌの為に」ばかり言っていました。
最終週の稽古では「お客様のコートハンガーが劇場に無いみたいだから俺が買うわ」と。気持ちはわかるけど、この追い込み時期にお客様のコート?その時はイライラしてしまいましたが、劇場入りしてから分かりました。コートハンガーは必要でした。私が見えてなかったんです。大悟は俺の見えないことが見える人だなと思いました。
大悟、公演を背負ってくれてありがとう。
大悟と一緒にやれて良かった。感謝しています。

坂口彩さん
彩さんから学んだことはとても多く、台本にあそこまで付箋を貼って細かく書きこんでる人を初めて見ました。演出、細かいダメ出しをしても全て書き込んでいきます。稽古場での姿勢も、渾身なのです。全く流さない、妥協しない、こんなに一生懸命やって疲れ果ててしまわないかと心配したことがたびたびありました。普通よりはるかに一生懸命なのです。
登場人物の布美、特有の面倒くささは彩さんの中には恐らくあまり無いはずで、だから役作り苦労したと思うんだけど、彩さんは人間力で乗り越え、掴んでくれました。
彩さんは台本を一字一句変えませんでした。ある程度は自由に変えても良いですよ、と言っても変えませんでした。すごく台本を尊重してくださってることに何度もジーンとしました。彩さんから発せられる言葉は美しく、台本を書いた身として彩さんに救われた部分が多々ありました。星は恒星。恒星の輝きを放つには圧倒的な強さがないといけなくて、彩さんが星を担い、星の布美を担ってくれて、モルディブの星は強く輝いたと思います。感謝。ありがとうございました。

孝島佑香さん
佑香さんはセンス、才能の人だと思ってて、25歳であの座組みのヒロインをやり遂げたのは一種の驚愕でした。でも最初お願いするときは、博打だなぁと。下手すると彼女も作品も潰してしまうかもしれないと。オーディション後も2回くらい強く意思確認をしたのを覚えています。センスだけで出来る役ではないからです。
佑香さんが本領を発揮したのは小屋入りしてからですね。劇場に入ってからさらにどんどん良くなりました。本人が言うように、照明が当たるとテンション上がる、本当にそうだと思いました。
しなやかで華があり、月の優しさが出てましたね。
千秋楽前の稽古、すごく良い目をしていました。
末っ子気質で、座組みの皆から可愛がられていたし、お客様も佑香さんの魅力に気づいたと思います。今後、キャパオーバーの舞台にたくさん出て、ひたすら成長してほしいなと思いました。ありがとうございました。

本田和大さん
本田さんは口を開けば「謙虚に謙虚に」とおっしゃる。僕と本田さんは昔、一度交わりそうになって、交わらなかったんです。でもお互いのことを覚えていて、お互いのことを何となく気になっていて今回、初めて交わりました。
Bar Sheep はみんなのオアシスであり出会いの場所であり、みんなが思いを吐露する場所であり、みんなを変えた場所。人間交差点のような場所でした。
そこを本田さんが担うことで嘘がない空間、真実の空間が生まれたと思っています。
役者って極論、生き様がすべて出ると思うのです。役を限界まで突き詰めると、その人のすべてが出てくるものだと思うのです。
本田さんから出てきたものは、優しさ、深い愛だと思いました。
「漢」なんでしょうね。僕にない部分をもっている方。本田さんは僕より年下なんですが、畏敬の念で見ていました。本田さん、ありがとうございました。今回ご一緒できて幸せでした。感謝。

米倉啓さん
米倉くんは、昔、イボンヌが超拡大路線を敷いていたときに、出演してくださった俳優さん。あの頃と随分変わりましたね、と何度も細い目をパチクリさせながら言ってくれました。もし何かが変わったとするのであれば、売れたい、とか、演劇で飯を食いたい、とかそういう発想が一切なくなったことかもしれません。ただただ純粋に演劇をしたい、それだけでした。米倉くんの演じた夫、田中は救われない役だったと思います。米倉くんもカーテンコールで言っていました。「今回の役で救われないのは僕だけです」と。米倉くんのキャラクターが言うから笑いが起こっていましたが、大変だったと思います。
布美から見ると、田中は妻をモノ扱いしている存在。妻の心模様を尊重せず、田中は自分本位の幸せを布美に押し付けます。もちろん田中を選んだ布美の責任ではありますが、布美は田中を媒介にして人生とは何かを本気で考えさせられたはずです。布美は子供が欲しい、家庭が欲しいという理由だけで、愛情を持てない田中と結婚しました。結果、崩壊します。田中は「俺は誰も裏切っていない」とラストで言いますが、妹に諭されます。「お義兄さんが好きなのは自分なんだよ」と。
田中のキャスティングにはすごく時間がかかりました。迷って迷って、最後にたどり着いたのが米倉君でした。米倉くんと、新小岩の駅で二人で話して、米倉君が出演を受けてくれたとき、ホッとして空を仰いだのを覚えています。
米倉くんだから成立するんだろうなというセリフもたくさんありました。米倉くん、身を削って演じてくれてありがとう。感謝しています。またよろしくね。

河村早映さん
妹亜紀役。妹は姉、布美とともに変わっていきます。90分という枠組みの中でその変化を見せ切るには力のある俳優さんでないと厳しいだろうなと思っていました。とあるご縁で河村さんに出会い、演技を見せていただき、お話しするうちに、面白い人だなと思いました。まったくガツガツしていないんです。むしろ何で役者をやっているのか不思議なくらい、。なので本人に聞きました。何で役者なんですか?と。本人は「なんででしょうね」とほほ笑むだけです。ただ、河村さんの正々堂々とした言動、立ち回りがやけに好感を持てたというか気になったんです。
稽古がスタートして、座組のメンバーは河村さんの魅力に気付いたと思います。欲がないからでしょうか。役に生き切ることにだけ思いっきり集中してくれました。日に日に妹が浮かび上がり、最後はしっかりと、存在しました。
最年少23歳ですがベテラン俳優たちに一切引けを取りませんでした。これは、奇跡でもなんでもなくて、素養だと思いました。
本人の心がけと努力がそのまま結果に出たと思います。良い女優さんと知り合えて良かった。ありがとうございました。

鈴木将元さん
鈴木くんはお世話になっているONEANDONLYの「ショパンの馬鹿!」で主役、ショパンを演じていた男で、代表、松永さんの下で頑張っている若き俳優です。鈴木くんは、わかりやすい煩悩がある男で、迷い、悩み、苦しみ、日々自分探しの真っ最中なんだろうなという印象でした。それはつまりエネルギーの強さでもあります。
そこに期待して今回、お願いしました。インストラクターにはグレードがありますが、役者にはグレードがありません。なので、外から見ると一見対等、同じに見える俳優同士ですが、稽古に入るとその経験値、スキルの差というのは厳然と存在します。鈴木君はその中でいろいろと迷い、苦しかったと思うんです。でも、彼は逃げませんでした。最後の最後まで僕に聞いてきました。「今日はどうでしたか?」と。根性あるし、素直だなと思いました。今、僕の中にある鈴木くん像は「逃げない男」です。これからも頑張って欲しいなと思います。ありがとう。

森山太さん
明知というゲイのインストラクターを演じてくださいました。演技が上手いというのはお客様、共演者全員が知っているので、僕の中で感じた森山さんのすごさは、構成力でした。そのシーンそのシーンでどう見えるか、もあるのですが森山さんの演技は、終わってみてから明知の果たす役割が浮かび上がってくるのです。つまり、劇構造をきちんと理解してくださって、僕のやりたいことをしっかり見抜いて理解くださってその上で役としてどう生きるか考えて、演じてくださりました。作品をすごく尊重するアプローチだったと思いまして、何度か鳥肌が立ちました。クレバーで緻密な方です。自分に厳しい方なんでしょうね。
勝手にベジタリアンだろうと思って「森山さんってベジタリアンですか?」と聞くと「いえ、普通に肉食います」と言われ、また「森山さんって普段酒飲まないんでしょ?」と聞くと「いえ、普通に飲みます」と言われました。
僕と森山さんの会話ってずっとそんな感じでした。面白いお兄さんだなってずっと思っていました。
劇場入りしてからの裏での森山さんの仕事っぷりは座組一同、目が覚める思いでした。色々と助けられました。
布美の鏡のような存在、明知。
そして布美にとっての幸せの象徴だった明知。
森山さんに演じて頂いて光栄でした。
ありがとうございました。

舞台監督、照明 石川順さん
石川さんは鈴木くんと同じONEANDONLYの繋がりで松永さんが最も信頼を置く方です。
今回初めてご一緒しました。もともと舞台に対する情熱は知っていたし、とても誠実な方だと聞いていたのですが、今回ご一緒して石川さん、すごく肝が太いなと、いや、この人は修羅場をくぐってるなと感心しました。舞台のスタッフはいざという時の動きがすごく大事なのですが、石川さんは冷静沈着なんですよね。あと、僕が演出をしながら主宰していることを理解してくださり、僕の手が回らないところを細かくフォローしてくださいました。印象的なのが、会場に届いたお花に毎日水をくれたことです。それってなかなか出来ないことで、、、嬉しかったですね。丁寧に座組に向き合ってくださいました。また、照明の直しにも何度も付き合ってくれたり、稽古場にコーヒーメーカーを持ってきてくださって役者に飲ませてくださったり、この方は舞台芸術を愛してるんだなと思いました。
裏の起点を石川さんが作ってくださり、石川さんによって、無事に幕が開き、無事に幕が下りました。お世話になりました。愛の深い面白い方だなと思いました。またどこかでご一緒しましょう。ありがとうございました。

音響 澤圭祐さん
もともと音響にすごくこだわる演出をするので澤君のプレッシャーたるや大変だったと思うんです。そもそも初舞台参加ですから。僕も澤君のオペ技術がどんなものかわからず緊張していました。でも稽古場へ足しげく通ってくれ、しかもキャストと緊密にコミュニケーションをとってくれ、場になじんだ後は、細かいSEを作って持ってきてくれました。稽古場の段階で、すべて選曲、SEが完成したのは、澤君のおかげです。さらに本番入ってびっくり。澤君、歌うようにオペしていました。舞台音響の仕事って深いなと思うのですが、澤くんならこれからも十分やっていけると思いました。むしろ、物語と音楽の関係性を理解してくれる、物語を愛してくれるので、舞台の音響マンに向いてるなと思いました。自身のフェイスブックやツイッターでもたくさん宣伝してくれて、こんな親身なスタッフさんいますか?というくらい稀なスタッフがここに誕生したのでした。石川さんと澤君が、目を合わせながら、最後の暗転シーンをオペしているとき、ああ幸せなことだなと思いました。すごく助かりました。澤君、ありがとう、君の友情、愛を忘れない。

制作 本田真里菜さん
ふってわいたように本田和大さんの奥様である、本田真里菜さんに今回お願いしました。ご主人の本田さんがこの舞台を機に、映像のほうへ活動の場を変えるという中、真里菜さんとしても夫を支えたいという思いが強くあったと思うのです。
一方、お嬢さんの真絆ちゃんもいて、いろんな気遣いが大変だったと思うのです。特に本番、真絆ちゃんが泣いてしまうのではないか、とかそういう不安はあったと思うのです。
僕は1日、まったく舞台を観ずに、袖で待機していた日がありまして、その時、ふと受付を見上げると、真里菜さんがずっと真絆ちゃんを抱きしめていたのです。「泣かないでね」という祈り、「和大さん頑張ってね」という祈り。その姿はなんとも言えない美しさで感動を覚えたものでした。真絆ちゃんは静かに真里菜さんに抱かれていました。あの日、僕は公演のことより、真里菜さんが真絆ちゃんを抱っこしていた残像ばかりフラッシュバックしていました。
舞台芸術の世界というのは、究極、「気持ち」「こころ」で成り立っている世界だと思うのです。だから、夫婦の絆、親子の絆を、袖で見ることが出来てとても嬉しかった。本田さんに制作をお願いして良かったです。感謝しています。

さらに、真絆ちゃん。ありがとうね。
あんな狭いところで毎日大変だったね。
あなたの名前は「真実の絆」と書きますね。
良い名前をもらったね。
これからもお父さんとお母さんの背中、生き様を見続けてね。

宣伝美術 たなか鮎子さん
会ったこともないのに引き受けてくださってありがとうございました。たなかさんのチラシを見て直感で連絡を取って、海外に住んでらっしゃるってわかっていたのにどうしてもお願いしたくて、熱意だけでお願いしたのに、受けていただいて本当にありがとうございました。
チラシって舞台表現においてとても大事で、作品の一翼を担うのですが、今回、たなかさんにお願いして良かったと心から思います。感謝。ありがとうございました。

色んな人に支えられた公演でした。
ONEANDONLY 松永さん、ありがとうございました。
黒田さん、お手伝いさんの手配をしてくださってありがとうございました。土壇場で助けてくださり、感謝しています。

また支えてくれた家族にも感謝しています。

本当に、みなさま、ありがとうございました。

今回の表現は、ある意味押しつけがましいセリフもあったかと思います。

でも、それでも伝えたかった。今の僕にできる精一杯の表現でした。

少し休んで、また真摯に舞台と向き合います。

お恥ずかしながら、公演中、ずっと泣いていました。

嬉しかったのです。震えるほど。すべてのことが。

ありがとうございました。

福島真也

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