シューマンの光と影 そしてクララ・シューマン

以前、東京イボンヌ公演で「シューマンに関すること」という舞台を発表した際、多くの書籍を読みましたが、 一番気になった記述は

「シューマンは幼い頃からとにかく無邪気で何事にも意欲的、活発、利発な少年だった。」

「しかし、16の時に姉が自殺している、そして翌年最愛の父が姉の自殺に心を痛めた影響で病死。これが後々までのシューマンの人格に暗い影を落とした」

この二点。

シューマンの躁鬱気質の先天性と後天性に関して評価は分かれますが、若干の先天性がありながらも多大な後天性だと私は解釈しました。

シューマンはその後、母を心配させまいと、ドイツの国立大学で法学部の生徒になります。

ところが実家の母の安心は束の間で、全く勉強しないでピアノばっかり弾いている。

そしてヴィークに師事します。

ヴィークは彼の天才に気づいたものの、躁鬱気質にも素早く気づいています。

だから娘のクララとの結婚は猛反対したのか?
これは娘を思ってこその愛情なのか? これも文献によって様々。

やれヴィークのエゴだ、ヴィークはクララを天才少女として売り出し中で野望を打ち砕かれたくなかった、まあ、あれこれ書かれています。

しかし後年ヴィークとシューマンは和解しています。
ヴィークから歩み寄っているんです。ヴィークにとって見れば、裁判でクララを強奪したシューマンですから、憎いはずだった。

「名声を得たシューマンにすり寄る卑怯なヴィーク」という解釈もありましたが、後に本格的に発狂したシューマンを予見して、娘の力になりたいというヴィークの親心もあったのではないか、と私は解釈。

文献は出来事の時系列や日記などから、時々の人物の心を予想しますが、(あてはめますが)、どれが腑に落ちるかは読者次第ですね。

私には娘がいませんが、もしシューマンが娘を嫁に欲しいと言ったら、100%嫌です(笑)

しかし、クララという女性も変わっています。いや、少し語弊がありますね。

「肝がとんでもなく座っている」

自身はヨーロッパ随一のピアニストとして、本来なら何不自由ない暮らしが出来たはずだった。しかし、あえてシューマンを選んだ。そして別れなかった。
若気の至りというなら、早々に別れているでしょうが、別れるどころか彼の曲を広める為に生涯、奔走するわけです。

しかも子供が8人。夫は子育て家事一切やらない。今日食べるパンが無い。
借金を重ねる日々。だから演奏旅行に出る。でも交通費すらままならない。ついにメンデルスゾーンや音楽仲間に借金をする。それでもクララは踏ん張るわけです。

使命感じゃないかな。クララは夫が天才であることを確信していた。
今私が夫の曲を広めないで誰がやる。そんな気持ちだったと想像します。

しかし、クララが子育てにパニックになりながら、演奏旅行を繰り返した果てに、夫は発狂してライン川に身投げをします。しかも二回も。クララのその時の気持ち。ショックは想像もつかない。そのとき、ブラームスがクララを支えます。

精神病院に入ったシューマンの遺言。これについても様々な解釈があるので驚きました。

1、 「私は知っている」
これは、クララとブラームスの不倫を示唆していたという解釈。

2、「あなた、ワインよ!」とクララは一生懸命にシューマンの好きなワインを見せた。シューマンは微かに目を開けて「ああ、分かってる」と言って、亡くなった。

どっちなんでしょう。

シューマンは末の息子がブラームスとクララの間に出来た子供と疑っていた。
だからクララがブラームスと不倫していたほうが現実的だという解釈が前者。
確かに細かいことを言えばそれらしき状況証拠はあります。

いや、クララは踏みとどまった気がします。
ブラームスがクララに思いを寄せていたのは事実。

でもクララは手紙で断言しています。
「私が生涯愛し続けるのはロベルト・シューマンただ一人です」。
まるで弟を諭すように。

クララという人はそれにしても美しかった。
あんな苦労が絶えない生活を感じさせない美しさを保ち続けた。
天才に囲まれ、自らも、天才の作った音楽を自由に奏でる才能を持ち、日々の躍動を感じながら生きた女性だったんだと思います。
そりゃドイツの紙幣に顔が載るわな。(ユーロが出来る前)

今シューマンのピアノコンツェルトを聴きながらこれを書いてます。
この曲を私が聴けるのはクララのお陰だと思っています。
もちろんブラームスはじめシューマン支持者の力もありますが。
ただ、クララの苦労とは対照的にこの曲の美しさはなんたることか。
これは皮肉と言うのでしょうか。単に事実の積み重ねと言うのでしょうか。
クララはこの美しさを伝えたかったんでしょうね。この音楽を。
19世紀にドイツで作られた曲を、現代東京の片田舎でノート広げながら、36歳の禿げ頭が聴いています。

そして、残念なことに、シューマンとショパン、実に相性が悪いんですね。笑
いとおかし。

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